現在の日本の労働法の下では、労働者を解雇するのは非常に難しいことです。
やる気や能力がない社員、勤務態度が悪い社員であっても、簡単に解雇をすることはできません。
安易に解雇をしてしまうと、従業員から、解雇権の濫用を理由として、労働審判、賃金仮払い仮処分などを申し立てられ、結果として、多額の未払い賃金の支払いを命じられたり、損害賠償の支払いをしなければならないことにもなってしまいます。
東京地方裁判所・平成13年8月10日判決によると、
① 単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、
② その他是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど、今後の改善の見込みもないこと、
③ 使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、
④ 配転や降格ができない企業事情があること
などを考慮して解雇権の濫用の有無(解雇の有効無効)を判断すべきであるとしています。
やる気がない、能力がない、勤務態度が悪いということを理由にして、簡単に解雇を言い渡すのは非常に危険です。
上記の①~④の条件があるかどうかを慎重に判断しなければなりません。
経営者から見ると明らかな怠慢だと思われる場合でも、裁判では認められないケースも多いため、
解雇をお考えの場合には、必ず弁護士にご相談されることをお勧めします。
ちなみに、裁判では解雇が認められないだろうという場合には、退職勧奨を行なって、合意退職に持ち込むことになります。
退職勧奨を行なって、本人が合意した場合は、必ず合意書を作成してください。
また、解雇の場合も、退職勧奨を行う場合も、後に争われる場合があることを考えて、口頭で注意をするのではなく書面で行う、再教育や指導を実施する、配置転換を行うなどの措置を取っておく必要があります。