質問
マンション専有部で、流しの下から下階へ漏水しました。調査の結果、共用部分の瑕疵ではなくこの専有部分の賃借人の過失、及び専有部分の瑕疵という報告がありました。
区分所有者と賃借人は双方の過失を主張し折り合わず、また、組合の管理者は管理組合が加入する保険対応をせず、区分所有者・賃借人に費用を負担させる意向です。
質問1.仮に調査費用・修繕費用両面での金銭的な決着を求める訴訟を提起するとし
て、相手方を、①区分所有者・賃借人連名、②区分所有者だけ、③賃借人だけとした方がよいのでしょうか。
質問2.こうした判例・裁判例はありますか。
回答
質問1について
賃借人の過失,専有部分の瑕疵により漏水が生じ,下階に被害が出た場合,賠償の責任をどこに問うべきか,という点については,賃借人と所有者両方に対し責任を追及するということがあり得ると存じます。
まず,賃借人の責任についてですが,漏水の発生が賃借人の適切な使用・管理によって回避できたものであれば,工作物の占有者として不法行為による責任追及が可能です。
次に,区分所有者としての責任についてですが,所有者は専有部分に瑕疵がある場合,その瑕疵を取り除くべき義務があり,その義務を怠ったことにより損害が生じたのであれば,所有者としての責任を負うこととなります。
これらの責任は,下級審の裁判例ではあるものの,「連帯責任」として認められているものがあります。
当然のことながら,仮に連帯責任に問えるのであれば,②区分所有者だけあるいは③賃借人だけ,という場合よりも賠償の回収可能性は高まりますし,賃借人と所有者の過失が競合して結果が大きくなった場合にも責任が問いやすくなるのが一般的かと思われます。したがって、①がベターかと思われます。
質問2について
裁判例としては,東京地方裁判所平成4年3月19日の判決として,豪雨のためにベランダの雨水が溢れて階下に漏水したという事案で,ベランダの清掃整理が不十分だった占有者(賃借人)と,排水機能を阻害した増築をしてしまった所有者のそれぞれに共同不法行為を認め,「連帯責任」とした事例があります。