質問
長期間にわたり建物賃貸借契約の更新手続きがされず、法定更新の状態になっている借主がいます。更新料も未払いです。ただ、賃料の未払いはありません。
長期にわたる更新不履行を理由にして、契約の更新を拒否することはできるのでしょうか。
回答
賃貸借契約において貸主が更新を拒否するには、正当事由(借地借家法第28条)が必要です。
本件のような「長期にわたる更新不履行」が正当事由に当たるかどうかですが、契約期間満了までに合意更新がなされなかった場合の法定更新(同法第26条)は、賃借人保護のために法が認めた制度であり、賃借人は合意更新をせずに法定更新の制度を利用して契約を更新してもよいことになっています。従って、賃借人が長期にわたって更新手続(合意更新)をしないことは正当事由には当たりません。
また、更新料も未納になっていますが、この点については、そもそも法定更新の場合に更新料を請求できるのかという問題があります(判例を分析しますと、この場合に更新料を請求できるかどうかは契約内容でその旨を定めているか、すなわち、「合意更新ではなく、法定更新の場合においても、更新料を支払う」旨が契約書に記載されているかどうかによるようです)。
仮に更新料を請求できる場合に該当しても、請求は法定更新が生じた時の1回に限られ、その金額は賃料換算で1~2ヶ月分と思われますから、他に未払い賃料が溜まっているなどの事情がないと、正当事由にはならないと考えられます。