会社には、監査役を設置している会社とそうでない会社があります。監査役はどのような役割であり、どのような場合に設置されるのでしょうか。このページでは、埼玉県で30年以上、中小企業を中心とする企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、監査役について、ポイントを絞って分かりやすく解説します。

監査役は何のために設置するのか?

監査役は、文字どおり、会社の経営を監査すること。粉飾決算、反社会的勢力や総会屋、横領や背任等の企業不祥事を避けるため、経営者と独立して監査することが本質的役割として求められます。

もっとも、監査役は、株式会社の必須の機関とはされておらず、定款の定めにより監査役(または監査役会)を設置するかどうかは、会社の判断に委ねられています。しかしながら、以下のとおり、監査役を設置しなければならない場合もあります。

監査役の設置が義務付けられる場合とは?

取締役会設置会社には監査役を置く

まず、監査役は、取締役会設置会社においては、設置しなければなりません(会社法327条2項)。

なぜなら、業務執行の決定は取締役会に委ねられており、株主総会の権限が制約されていることから、取締役が暴走しないよう、株主に代わって監視する機関として必要となるからです。

もっとも、その役割については、閉鎖的な会社である全株式譲渡制限会社においては、監査役の役割を限定し、会計監査のみとすることもできるとされ(会社法329条1項)、監査役の代わりに会計参与を置くことでも足りるとされています(会社法327条2項但書き)。

ところで、この場合の監査役は、半数以上を社外監査役にする必要があります。

社外監査役とは?

社外監査役とは、過去にその会社または子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人となったことがない者をいいます。

余談ですが、東京証券取引所の上場企業では、独立役員を1名以上確保することが義務付けられます。

会計監査人設置会社には監査役を置く

次に、監査役は、会計監査人設置会社においても、設置しなければなりません(会社法327条3項)。

なぜなら、会計監査人の会計監査を機能させるために、監査役に取締役の業務を監査させ、その独立性を保つ必要があるとされているからです。

なお、取締役会設置会社の場合に、閉鎖的な会社では、監査役の役割を制限することが可能ということを説明しましたが、会計監査人設置会社においては、例え全株式譲渡制限会社であっても、そのように監査役の権限を会計監査に限定することはできないとされています(会社法389条1項)。

どのような人が監査役になるのでしょうか?

まず、法人は監査役になれず、人(自然人)でなければなりません。

また、監査役は、取締役会を監査するための機関ですから、例えば、会社の取締役、使用人、子会社の取締役や使用人を兼任することはできません(会社法335条2項)。

顧問弁護士を監査役にすることはできるのでしょうか?

たまにご質問をいただきます。

上述のように、兼任禁止などと監査役選びに苦労する会社もあり、顧問弁護士に監査役を担ってもらうことができるのかとお尋ねいただくこともあります。

結論としては、可能です。

かつて、裁判で争われたケースでは、弁護士の監査役が、訴訟事件の依頼を会社から受任している関係にあったものであるが、最高裁は、会社法の監査役の兼任禁止の規制は、会社から委任を受け手訴訟代理人になることまで禁止するものではないと判断しております(最判平成元年9月19日)。

また、監査役と顧問弁護士を兼ねることが禁止されるかどうかが争いになった高等裁判所では、弁護士が会社に専属的である等の特段の事情がない限り、禁止されないと考えております(大阪高判昭和61年10月24日)。

つまり、いわゆる企業内弁護士(インハウスロイヤー)は使用人であるため監査役になることはできませんが、外部の法律事務所の顧問弁護士を監査役に選任することはできます。

監査役の業務内容についてご説明します。

最後に、監査役の業務について説明します。

監査役は、業務監査(取締役の職務執行を監査すること)と会計監査(会計に関する調査をし、調査結果を株主総会に報告すること)とがあります。

この点は、詳しく説明すると大幅に長くなりますので、またの機会に譲りたいと思います。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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