企業間では債権譲渡が行われることが多くあります。会社は日々、債権債務が発生しており、時に、債権を担保にお金を借りたり、債権をもって弁済したりすることがあります。このページでは、埼玉県で30年以上、中小企業を中心とする企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、債権譲渡について、ポイントを絞って分かりやすく解説します。

債権譲渡とは?

債権譲渡とは、文字通り、債権(人(法人)に対する請求権)を譲り渡すことを言います

例えば、A社がB社に対して貸金返還請求権(A社がB社に貸した金を返すように要求できること)を有しているとします。この場合、A社は「債権者」、B社は「債務者」といいます。このA社のB社に対する貸金返還請求権を、A社が業務委託料を支払わなければならないC社(A社とC社の間では、A社が「債務者」、C社が「債権者」となります)に対して、業務委託料を支払う代わりに、譲り渡したとします。そうすると、元々はA社のB社に対する貸金返還請求権は、C社にB社に対する貸金返還請求権に移転します。つまり、B社は、A社ではなく、C社に弁済しなければならなくなります。これを「債権譲渡」といいます。この場合、C社は「譲受人」、A社は「譲渡人」といいます。

旧債権者(譲渡人)A社   →    債務者B社
               ⇓ 債権譲渡
新債権者(譲受人)C社   →    債務者B社

もっとも、B社にとっては、A社との契約だったのに、突然C社から「うちに金を返すように」といわれても、信用できません。また、仮に言われるがままに支払ったあと、A社は「そんなこと知らない」と言いだすと、B社は二重に弁済をしなければならないことになります。

このような不都合を避けるため、対抗要件という考え方があります。この対抗要件を備えた債権譲渡であれば、B社はC社に弁済しなければならず、逆に弁済したならばA社からもとやかく言われないで済むことになります。

では、債権譲渡の対抗要件とは何か。

内容としては、債務者に対する対抗要件(C社のB社に対する対抗)と、第三者(債権の二重譲受人・差押債権者・破産管財人など)に対する対抗要件とがあります。

債権譲渡の対抗要件とは?

以下の考え方に整理されます。

① 債権者(譲渡人)から、債務者に対し、債権譲渡を通知する(民法467条)。
→これにより、債務者に対抗できます。

② 債務者が債権譲渡を承諾する(同上)。

  →これにより、債務者に対抗できます。

③ ①または②を確定日付のある証書(公証役場で書面に確定日付をいただきます)により行う。

  →これにより、債務者のみならず、第三者に対抗できます。

④ (譲渡人が法人の場合)債権譲渡登記ファイルに記録する。

  →これにより、債務者には「知られず」に、第三者に対抗できます。

債権譲渡のポイントは、債務者に知られたくなければ、債権譲渡登記ファイルを使用し、債務者に知られてもよい(協力的)場合は、債権者が債務者に確定日付ある通知を送るのがもっとも望ましいといえます。

<参考>
(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

<法務省HP>
○ 譲渡人は,法人のみに限定されています。
○ 譲渡に係る債権は,指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限定されています(債務者が特定していない将来債権も登記することができます。)。
○ 債権譲渡登記がされた場合において,譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし,又は債務者が承諾をしたときは,債務者についても確定日付のある証書による通知があったものとみなされ,対抗要件が具備されます。
https://www.moj.go.jp/MINJI/saikenjouto-01.html

債権譲渡の契約書案(ひな形)は?

あくまで簡単な例となり、個別具体的な取引内容やその目的により条文の中身は大きく異なります。顧問先様には、個別具体的な契約案の立案にも携わることが可能です。

債権譲渡契約書

譲渡人(甲)と譲受人(乙)とは、本日、次のとおり債権譲渡契約を締結したので、契約締結を証するため、本書2通を作成し、甲乙が各1通保有する。

第1条 甲は乙に対し、債権(「設定者と第三債務者(住所、会社名)(丙)との間の業務委託取引に基づき、譲渡日である令和〇年〇月〇日において発生済みの業務委託料代金債権及び令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までに将来発生する業務委託料代金債権ならびにこれらに付帯する一切の権利」など)を以下の約定で金〇円で譲渡し、乙はこれを譲り受けてその代金を支払い、当該債権証書の引渡しを受けた。

第2条 甲と乙は、直ちに動産及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づく債権譲渡登記手続を行う。
 債権譲渡登記の存続期間は〇年間とする。
 債権譲渡登記の手続費用は〇の負担とする。

第3条 期限の利益喪失など

第4条 甲におうて、前条各号の事由に該当した場合、乙は、動産及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の第4条2項に基づく第三債務者への通知を行うことができるものとし、甲はこれに協力する。

第5条 譲渡債権の保証の表明など

第6条 管轄裁判所など

問題となるのは、債権の特定です。

特に、将来債権(現時点で未確定の債権)を譲渡の対象とする場合、例えば、譲渡担保という方法で債権を担保として提供する方法で問題となります。

最高裁は、平成11年1月29日判決において、概ね、債権譲渡契約にあっては、譲渡の目的とされる債権がその発生原因や譲渡に係る額等をもって特定される必要があることはいうまでもなく、将来の一定期間内に発生し、又は弁済期が到来すべき幾つかの債権を譲渡の目的とする場合には、適宜の方法により右期間の始期と終期を明確にするなどして譲渡の目的とされる債権が特定されるべきである、と述べております。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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