無断欠勤を理由に解雇をすることはできるのでしょうか。また、どの程度の欠勤が続けば解雇ができるのでしょうか。そして、解雇ができない場合は、欠勤する従業員にどのように対応すべきでしょうか。こんなお悩みについて、今回は解説をいたします。
無断欠勤を理由に解雇はできるか
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となる(労働契約法第16条)のですが、無断欠勤が長く続くようであれば、解雇をすることができます。
どの程度の無断欠勤が続けば解雇できるのか
国家公務員の懲戒処分の基準を定めた、懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)において、「正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。」という基準が定められています。そして、民間の会社や団体の従業員の解雇についても、この基準が参考になります。
また、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は,解雇予告手続は不要とされていますが,この「労働者の責に帰すべき事由」について,行政解釈は「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し,出勤の督促に応じない場合」というような認定基準を示しています(昭和23年11月11日基発第1637号,昭和31年3月1日基発第111号)。そのため、この基準についても解雇の参考となります。
以上を総合しますと、正当な理由なく、2週間~21日以上の無断欠勤をした場合というのが、解雇できるか否かの一つの基準になると言えます。
無断欠勤の日数だけが解雇できるか否かの基準となるか
無断欠勤の日数だけで解雇ができると考えることにはリスクがあります。
例えば、ある裁判例では、大学の教員の無断欠勤の日数が1か月に達したというケースで、裁判所が、就業規則の規定に従い懲戒解雇事由には該当すると判断しつつも、欠勤をしたのが春休み中であって、講義がなく、教員としての業務には大きな支障を来さなかったこと等を理由に、懲戒解雇は、権利の濫用であり、無効であると判断しました(仙台地方裁判所平成2年9月21日決定労働判例577号55頁)。
そのため、無断欠勤の日数だけでなく、会社の業務に支障が生じたかという視点も、解雇を検討するにあたっては必要になります。
解雇ができない場合はどのように対応すべきか
解雇ができない場合には、解雇よりも軽い処分で対応することを検討するのが良いと思います。
懲戒処分
無断欠勤をした場合には、懲戒処分を行うということを、あらかじめ就業規則に定めておけば、懲戒処分を実行することが可能です。戒告やけん責など、書面や口頭による注意処分が考えられます。注意をしても改善がない場合には、次の処分を検討しても良いでしょう。
懲戒処分以外の注意
以上のような懲戒処分が出来ない場合であっても、欠勤が続けば、会社の業務に支障が生じますので、欠勤が続けば解雇となり得ることを告げて、ただちに出勤するように注意することが考えられます。
精神の不調を訴える従業員への対応で注意すべきこと
精神の不調を訴えている従業員が、無断欠勤をした場合には注意が必要です。裁判例では、被害妄想の精神的不調に陥った従業員の長期無断欠勤を理由とした諭旨解雇を、精神科医の診断を得て休職とすべきであったとして無効と判断した例があります(最高裁平成24年4月27日判決 労働判例1055号5頁)。精神の不調を訴える従業員については、医師の診断を仰いで、治癒する可能性があるか、休職がふさわしいのではないか等の意見を聞いた上で、解雇を検討することが必要になる場合がありますので、欠勤の日数が長期に及んだことだけを理由に解雇するというようなことは避けた方が良いと考えます。
まとめ
以上の通り、無断欠勤を理由とする解雇について、解雇ができるのか、解雇できる欠勤の日数はどの程度か、日数以外にどのようなことに気を付けるべきか、解雇できない場合はどうすべきか、精神の不調を訴える従業員にはどのように対応すべきかについて、解説をしました。細かく見て行けば、他にも様々な注意すべき点はございますが、弁護士は、その都度、事案について検討や調査を行い、会社側に対して助言を行っております。そのため、無断欠勤をする従業員に対してどのように対応すべきかについてお悩みの場合は、一度、当事務所へご相談頂けますと幸いです。
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