伴走支援型経営改善資金を受ける条件、融資の内容について説明し、また、経営が改善しない場合に取るべき法的な手続きについても解説します。
質問
伴走支援型経営改善資金というものがあると聞きました。どのような資金であり、どのような条件を満たせば融資が受けられるのでしょうか。
また、この融資を受けても経営が改善せず、売上の減少、赤字が続き、従業員の解雇などをせざるを得ない場合、最終的にどのようにしたらよいのでしょうか。
回答
1 伴走支援型経営改善資金とは
伴走支援型経営改善資金というのは、新型コロナウイルスやエネルギー・原材料価格高騰などの影響により、売上高が減少した中小企業が、金融機関との話合いを通じて経営行動計画書を作成することを条件に融資を受ける制度です。
2 融資を受ける条件
例えば埼玉県の場合、経営行動計画書のほかに、次の⑴⑵のすべてに該当することが条件になります。
⑴ 申込みの日以前1年以上、引き続き県内に事業所を有し、同一事業を営んでいる。
⑵ 次の①〜③のいずれかに該当している。
① セーフティネット保証4号の認定を受けている。
② セーフティネット保証5号の認定を受けている。
③ 次のアまたはイのa〜fのいずれかにあたる。
ア 最近1か月間の売上高が前年同月の売上高と比較して5%以上減少している
イa 最近1か月間の売上高総利益率が前年同月の売上高総利益率と比較して5%以上減少している。
b 最近1か月間の売上高総利益率が直近決算の売上高総利益率と比較して5%以上減少している。
c 直近決算の売上高総利益率が直近決算前期の売上高総利益率と比較して5%以上減少している。
d 最近1か月間の売上高営業利益率が前年同月の売上高営業利益率と比較して5%以上減少している。
e 最近1か月間の売上高営業利益率が直近決算の売上高営業利益率と比較して5%以上減少している。
f 直近決算の売上高営業利益率が直近決算前期の売上高営業利益率と比較して5%以上減少している。
取引先の倒産・リストラ、災害、金融機関の破綻などにより経営の安定に支障を生じている中小企業者であって、一定の要件を満たし、事業所の所在地を管轄する市町村長または特別区長の認定を受けた場合に、一般保証限度額の別枠として信用保証協会が保証を行う制度です。これによって。企業は新たな融資を受けることが可能になります。 経営の安定に支障を生じている要因として、セイフティネット保証制度では次の8つが挙げられています。
① 連鎖倒産の防止
② 取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
③ 突発的災害(事故など)
➃ 突発的災害(自然災害など)
⑤ 業況の悪化している業種(全国的)
⑥ 取引金融機関の破綻
⑦ 金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整
⑧ 金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡上記のうち、④⑤が、上記のセーフティネット保証4号、5号です。
3 融資内容
2の条件にあてはまる場合、運転資金・設備資金として1憶円を上限とする融資を受けることができ、また、返済条件は、5年間据え置き、10年以内の分割払い、融資利率は県が定める利率となります。担保、連帯保証人は必要に応じ求められることがあります。
4 経営が改善せず、赤字が続く場合
経営が改善せず、資金繰りが続かない場合、取るべき措置として考えられるのは、民事再生手続と破産手続です。
⑴ 民再生手続
裁判所を使い、債権者の多数決によって会社の債務をカットし、残った債務を何年かに渡って分割して支払っていくという手続です。
しかし、分割して支払っていくといっても、事業によって利益を生み出し、これによって支払いをしなければならないのですから、これまで赤字が続いていた中小企業が、急に利益が出る体質になるのは難しいでしょう。したがって、民事再生手続きを使うというのは、多くの場合難しいと考えられます。
⑵ 破産手続
裁判所の監督のもと、裁判所が選任した破産管財人が中小企業の財産を金銭に変え、債権者に公平に配当して、その後、運送会社は解散して消滅するというものです。
資金繰りに行き詰まった法人がとる法的な手続きは、ほとんどの場合、破産手続きになります。
5 破産手続きを考える時期
毎月の売上が減り、利益も赤字になり、これまで留保してきた預貯金を取り崩して経営を継続する状態が続き、今後、この状態を回復することも難しい、資金繰りも苦しくなってきたという場合は、破産を考えてみるべきです。
破産をするにも、裁判所に対する予納金、弁護士費用などに費用がかかりますから、預貯金がなくなり、債務の返済ができなくなった段階で破産手続を取ろうとしても無理なことが多くなります。
6 破産手続きを取る場合の流れ
① 会社の社長が、経理担当者とともに法律事務所に行き、弁護士が、会社の経営状態、資産・負債の内容、従業員・ドライバーの状況などを聞き、どのような手続を取るのがよいのかのアドバイスをします。
② 会社は、貸借対照表・損益計算書、資産目録、債権者・債務者一覧表、不動産登記簿謄本、賃貸借契約書、預貯金通帳、法人印鑑・ゴム印などを持参し、弁護士は、会社の社長、経理担当者と詳しい打合せを行ないます。
③ 従業員が出勤してくる時間に、会社に弁護士が出向き、社長とともに、従業員に対して、破産申立てに至った理由を説明し、在庫や帳簿類の保全への協力、破産管財人への協力を要請します。
従業員の一番の関心事は、今後どのようになっていくのか、給与、健康保険の切り替え、年金の処理、失業保険受給関係(離職票の発行など)なので、これらの取り扱いについても説明します。
④ すべての債権者に、弁護士が破産を受任した旨の通知を出します。以後は、弁護士が債権者との対応を行ないます。
⑤ 弁護士が破産申立書と添付の資料を作成し、裁判所に提出します。
⑥ その後は、破産管財人が選任され、弁護士、運送会社の社長、経理担当者などが、裁判官、破産管財人に対する説明を行ないます。
⑦ 裁判所で債権者集会が行われ、破産管財人が、運送会社の財産をお金に変えて、債権者に配当します。
これによって、破産手続きは終了し、会社は解散となります。
7 破産のメリット
① 債権者からの取り立てがなくなる。
裁判所への申立、債権者との交渉は弁護士が行いますので、債権者からの取立がなくなります。
② 資金繰りから解放される。
会社の資金繰りが苦しくなってくると、毎日資金繰りのことを考えなければなりませんが、裁判所に申立をし、破産手続きをすることによって、この苦しみから解放されます。
③ 債権者から不信感を持たれない。
破産は裁判所が関与し、破産管財人が選任される公平な手続きなので、債権者から、財産隠しがあるのではないかなどの不信を持たれることがありません。
④ 経済的に再スタートすることができる。
配当をした後の会社の債務はについて、会社の社長は免責と言って債務の支払いを免れることができるので、経済的に再スタートすることができます。
⑤ 未払い賃金の8割が立替払いされる。
破産をした場合、厚生労働省が所管する労働者健康安全機構に立替払いの請求をすることにより、一定の条件はありますが、従業員は未払い賃料の80%の支払いを受けることができます。
以上
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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