近年、企業経営においては、従来の企業経営に加えて様々な観点が必要とされています。
SDGs、ステークホルダーへの配慮などがここ数年で新しく求められるようになっていますが、従来から言われているものの一つに、コンプライアンスがあります。
そこで、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、中小企業支援と不動産に関する法律相談に注力し、また「不動産専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が、宅建業とコンプライアンスについて解説を行います。

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、法令順守と訳されることが多いのですが、単に、法令のみを遵守していればよいというわけではありません。
企業が永続的に発展していくためには、単に法令のみを遵守すればよいのではなく、社会倫理や社会規範に従うなどして、社会的な責任を果たしていくことが必要になります。
したがって、コンプライアンスはCSR(企業の社会的責任)とも密接に結びつくものです。

宅建業とコンプライアンス

宅建業とコンプライアンス

宅建業において、コンプライアンスを意識した経営をするためにはどのようにするべきでしょうか。
CSRを果たすことや、社会規範に従うという点は、宅建業以外の業種と同様です。
宅建業に特有のコンプライアンスということで言えば、やはり、宅建業法を順守した経営を行うということになります。

宅建業法

宅建業法を順守した経営を行うということはどういうことでしょうか。
宅建業法は、次のようにその目的を規定しています。

(目的)
第一条 この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。

この条文からわかる通り、業務を適正に運営することで、宅地及び建物の取引の公正を確保すること、宅地建物取引業の健全な発達に資すること、購入者等の利益を保護すること、宅地及び建物の流通円滑化を図ること、が宅建業法の目的ということになります。
従って、宅建業者は、まずは直接的な宅建業法の各規定に反しないようにすることが必要ですが、企業の社会的責任を果たすという観点では、宅建業者は、宅地建物取引の公正確保や、宅建業の健全な発達、購入者等の利益を保護することなどを意識しながら経営するべきということになります。

宅建業者のコンプライアンス違反

宅建業者がコンプライアンスに反しないためには

上記で見たように、宅建業者がコンプライアンスを意識した経営をするためには、宅建業法の規定に違反しないことがまず第一ということになります。
この観点で見ると、宅建業法違反として行政処分をされた場合には、コンプライアンス違反の典型例ということになります。

宅建業者に対する監督処分

埼玉県HPでは、他県業者に対する監督処分のページを設け、その処分結果や処分基準を広く告知しています。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a1106/takkensoudan-main/takkengyousya-kantokusyobun.html
監督処分は、宅建業法違反を根拠とするものですので、まさにコンプライアンス違反ということになります。

宅建業法5条違反

上記の埼玉県HPを見た中では、宅建業法第5条1項5号や6号に該当するとして、免許取り消しの処分を受けているものが多くみられました。

第五条 国土交通大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は免許申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。

五 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
六 この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項の規定を除く。第十八条第一項第七号及び第五十二条第七号ハにおいて同じ。)に違反したことにより、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者


(免許の取消し)
第六十六条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。
一 第五条第一項第一号、第五号から第七号まで、第十号又は第十四号のいずれかに該当するに至つたとき。
二 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が第五条第一項第一号から第七号まで又は第十号のいずれかに該当するに至つたとき。
三 法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに第五条第一項第一号から第七号まで又は第十号のいずれかに該当する者があるに至つたとき。

宅建業法の解説書籍によれば、宅建業法違反の経歴を持つ者で一定の年数が経っていない者は宅建業を営むにはふさわしくないことから、宅建業法の制定当初から不適格とされているとのことです。
また、バブル期に暴力団等が地上げに関与し、社会問題となったため法改正がなされた結果、傷害罪等で罰金刑を受けた経歴のある者で一定の年数が経っていない者は宅建業を営むにはふさわしくとされるなど、徐々に要件が厳しくなっていきました。

報酬規制違反

上記の埼玉県HPを見た中では、宅建業法第46条2項に違反するとして、業務停止や指示処分を受けているものも多くみられました。

(報酬)
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

宅建業法の解説書籍によれば、宅建業法制定以前は、不動産取引の代理・媒介報酬についての基準がなく、これに乗じて過大な報酬を強請されるという被害があったことから、宅建業法において、報酬額の規制が設けられました。
そして、報酬とは別に媒介活動に関して要した費用を請求することはできず、逐条解説宅地建物取引業法では、「広告料、案内料、登録料等名目いかんを問わず、委託者に対し本来の報酬以外御金員を請求したり、委託者から受け取ることはできない。情報提供料、企画料、コンサル料、業務委託料等と称して実体のない金銭を受領出来ない。」と記載されています。

その他

・売買契約書の不作成、不交付
・宅地建物取引士に重要事項を説明させなかった
などが、埼玉県HPに記載されています。

宅建業のコンプライアンスとグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、マンション管理士、マンション管理業務主任者、宅地建物取引主任者試験(現・宅地建物取引士)に合格した弁護士も在籍しています。
埼玉県内の不動産業者の皆様を会員とする「アネットクラブ」も主宰しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・不動産専門チームの弁護士は、不動産案件や不動産に関する法律相談を日々研究しており、また、100社以上の顧問契約による中小企業支援を行っておりますので、宅建業におけるコンプライアンスについても、自信を持って対応できます。

アネットクラブとは

アネットクラブとは、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が主催する、埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とするクラブです。
アネットクラブの会員からの法律相談をお受けしている他、アネットクラブ会員様のお客様の来所法律相談も初回無料としています。

最後に

不動産業者の皆様は、ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所のアネットクラブへのご加入や顧問契約の締結をご検討ください。
不動産案件・相談に精通した弁護士が回答いたします。

ご相談 ご質問
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
弁護士のプロフィールはこちら