従業員との雇用関係を継続する中で、やむを得ず、従業員の解雇を決断するという状況があり得ますが、使用者による解雇は労働法規により厳しく規制されていますので、拙速な解雇にはリスクがあります。
今回は、使用者が従業員を解雇(普通解雇)する際に注意すべき事項について解説していきます。

解雇とは

解雇は、使用者の側から従業員との雇用契約関係を一方的に解消する行為です。
従業員は雇用契約に基づき就労することで日々の生活の糧となる給与を得ていますので、雇用契約の解消は従業員の生活に大きな打撃を与えます。
そのため、従業員の生活基盤を危うくする解雇という行為は労働法規による厳重な規制がなされています。

労働法規による解雇規制

解雇禁止

労働基準法など根拠となる法律は様々ですが、方法の如何を問わずそもそも従業員を解雇することができない場合というものが存在します。
解雇禁止の場面をすべて網羅するものではありませんが、以下の各場面における解雇は禁止されており、解雇理由が以下に該当する場合、使用者が行う解雇は無効となります。
解雇禁止は従業員の権利行使を実効的なものとするために定められているものが多く、その観点から解雇禁止に違反して解雇を行った使用者に対して罰則を用意しているものもあります。

① 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
② 業務上の疾病による休業期間及びその後30日間の解雇
③ 産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇
④ 労働者が労働組合の組合員であることや、組合に加入したり、組合を結成しようとしたことなどを理由とする解雇
⑤ 労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の救済を申し立てたことなどを理由とする解雇
⑥ 女性労働者が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇
⑦ 労働者が育児休業、介護休業の申し出をしたこと、または実際にそれらの休業をしたことを理由とする解雇
⑧ 労働者が労働基準監督署などに対し、使用者の労働基準法違反や労働安全衛生法違反の事実を申告したことを理由とする解雇

解雇制限

解雇禁止に該当しない場合であっても使用者は従業員を自由に解雇できるわけではありません。それ以外の場合においても使用者による解雇は厳しく制限されています。
労働契約法上、使用者が行う解雇が有効と判断されるためには、①解雇に客観的・合理的な理由が存在すること、かつ、②解雇を行うことが社会通念上相当であること、の2要件が必要とされています。
これら2要件を満たさない解雇は無効と判断され、その場合、使用者は当該解雇により従業員との雇用関係を解消することはできません。

解雇予告

使用者が従業員を解雇しようとする場合、解雇要件が満たされている場合であっても、原則として、使用者は従業員に対して解雇の予告をしなければなりません。
使用者が従業員を解雇しようする場合、少なくとも解雇の30日前には従業員に対して解雇の予告をする必要があり、30日の予告期間を設けることができない場合には予告期間が30日に足りない日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。
たとえば、従業員に対して解雇の10日前に解雇予告を行う場合には、30日-10日=20日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

なお、使用者の解雇予告義務は、天変事変等やむを得ない理由のために使用者の事業継続が不可能となった場合、または、従業員の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合について、労働基準監督署の認定を受けることで免れることができるとされています。

解雇が無効と判断された場合のデメリット

使用者が行った解雇が裁判所の手続において事後的に無効と判断された場合、従業員との法的関係はどのようなものになるでしょうか。

解雇は従業員との雇用契約関係の解消を目的としてなされるものですが、解雇が無効とさされた場合、従業員との雇用契約関係を解消するという効果を生じさせることができませんので、従業員との雇用契約関係は継続したままということになります。

使用者が従業員に対して解雇を言い渡し、その就業を拒否したことにより、従業員は解雇されていた期間について従前の業務に従事することができませんが、従業員が業務に従事することができない原因は無効な解雇を行った使用者にあるとされますので、従業員は使用者に対して解雇期間中の賃金の請求を行うことができます。

そのため、解雇が無効とされた場合、使用者は、従業員との雇用契約関係を解消できないどころか、実際には業務に従事していない従業員に対して解雇期間中の賃金を支払わなければなりません。
解雇に至る経緯によっては従業員に対して不当解雇に伴う慰謝料が認められる場合もあり、解雇が無効と判断された場合の使用者側のデメリットは極めて大きなものとなると言わざるを得ません。

解雇が有効となる場合

使用者が有効に解雇を行うためには、上記の解雇制限の部分で述べた解雇の2要件を満たす必要があります。
解雇の2要件はいずれも満たす必要があり、一方の要件のみを満たしたのでは足りません。
以下ではそれぞれの要件について内容を確認していきます。

① 解雇に客観的・合理的な理由が存在すること

これは文字どおり、解雇の対象となる従業員に解雇理由が存在するか否かという要件です。
一般的には、会社の就業規則における解雇条項に記載されたそれぞれの解雇事由に該当する非違行為(問題行動)が従業員に存在するか否かの判断となります。

そのため、従業員の非違行為がいずれの解雇事由に該当するかについては解雇を行う前に十分に確認をしておく必要があります。

就業規則の解雇条項には個々の解雇事由が列挙されるほか、「その他各号に準ずるやむを得ない事由があったとき」等の包括的な記載がなされることが多いため、従業員の非違行為がいずれの解雇事由にも該当しないという状況は稀ですが、他の解雇事由とは全く性質が異なる理由により従業員を解雇しようとする場合には解雇事由該当性に問題が生じる可能性がありますので注意が必要です。

従業員が少なく就業規則を整備していない会社では従業員を解雇することができないのかという疑問が生じ得ますが、その場合でも従業員に一般的には解雇に相当するという非違行為が存在する場合には解雇を行うことは可能です(※これに対して、懲戒解雇を行う場合には就業規則における懲戒解雇事由の定めが必要とされています)。

解雇事由の時的な問題として、使用者が従業員を解雇した時点では認識していなかった従業員の非違行為が事後的に明らかとなった場合、当該非違行為を解雇の理由とできるかという問題もあります。
結論的に、事後的に明らかになった非違行為についても解雇の理由として主張できますが、解雇時点で解雇理由とされていない=当該解雇にとってそこまで重要な事柄でないという判断をされる可能性は否定できません。

なお、解雇にあたり従業員から解雇理由を明らかにするよう求められた場合、使用者は解雇理由証明書を発行しなければならないとされています。
解雇の有効性が事後的に問題となった場合、使用者が解雇理由証明書に記載した解雇事由が存在したか等が主として問題となりますので、使用者としては解雇に先立ち従業員の解雇事由を明確に整理しておく必要があります。

①の要件充足にあたっては、前提として就業規則の解雇条項を整備しておくことで解雇事由該当性における問題点を少なくすることができ、従業員に解雇を言い渡すまでに従業員の側に存在する解雇事由を網羅的に整理しておくことが重要となります。

② 解雇を行うことが社会通念上相当であること

これは従業員に解雇事由が存在することを前提に、解雇事由の内容、そこに至る経緯、従業員側の事情、使用者側の不当な動機や目的の有無、使用者側の事情、他の従業員との均衡、解雇手続の流れ等を総合的にみて、従業員に対して解雇という手段を取ることがやむを得ない場合であると判断できるか否かという要件です。

この判断にあたっては、解雇の対象となっている従業員の非違行為の内容や程度を前提に、解雇に至る経過等が総合的に判断されます。
従業員にとって初回の非違行為でもその内容が重大であるとして解雇の相当性が肯定される場合もありますし、従業員が軽い非違行為を連続して行ったことにより解雇の相当性が肯定される場合もあります。

②の要件は従業員の解雇事由とその他の事情とのバランスで考えられていますので、その充足にあたっては、従業員の非違行為が発覚した以降の従業員側と使用者側の対応を詳細に記録化しておくこと、十分な調査等を行ったうえで解雇を言い渡すまでの手続を慎重に行っていくことが重要となります。

解雇事由ごとの注意点

ここまで解雇に関する一般的な内容に触れてきましたが、以下では、代表的な解雇事由ごとに解雇を行う際の注意点に触れていきます。

従業員を解雇するか否かが問題となる典型的な場合として、
① 私傷病により勤務ができなくなった
② 能力不足、成績不良により業務を任せられなくなった
③ 欠勤、早退、遅刻で業務に支障が生じた
④ 経歴詐称が発覚した
⑤ 職場における不正行為が発覚した
等が挙げられますので、それぞれの場合について解雇を行う際の注意点を確認していきます。

① 私傷病により勤務ができなくなった

使用者としては従業員が業務外の怪我や病気により勤務ができなくなったのであれば早い段階での解雇もやむを得ないとの考えがあり得ます。
このケースで従業員を有効に解雇しようとする場合、相当程度の時間の猶予と従業員の業務復帰に向けた配慮が必要となります。

この場合に使用者がまず検討すべきことは休職制度の適用です。
従業員が怪我等により欠勤状態となった場合、当該従業員に対して休職制度を適用しないまま欠勤が続いていることを理由として従業員を解雇することは危険です。

休職期間経過後に確認すべきことは従業員の復職可能性です。
休職期間経過後も従業員が復職できない場合に解雇の手続に進むことになります。
従業員から復職希望が出された場合には、復職の可能性について、従業員の主治医の見解を前提に、場合によっては産業医の意見を求めた上で判断することになります。
従業員が復職可能な状態であるにもかかわらず復職を認めずに解雇することは危険です。
また、復職可能か否かの判断は、欠勤開始当時に従業員が従事していた業務についてだけでなく一定程度負担の軽い業務についても検討した上で決定すべきとされています。
従前の業務のみを前提に復職不能と判断し従業員を解雇することは危険です。

参考裁判例
東京地方裁判所平成17年2月18日判決
躁うつ病の躁状態にあること等を理由に解雇された従業員が当該解雇の有効性を争った事案
裁判所は、従業員は躁状態により勤務状況等が他の従業員を比較して劣っている状況であることは認めつつも、会社が従業員の病状の改善について主治医の助言を求めていないこと、従業員は休職制度の適用を受けているものの規定上は更なる休職期間の延長が可能であり、その間に病状の改善が期待できる可能性があるにもかかわらずそれが行われていないこと、社内では病気を理由に業務を軽減された状態で雇用が継続されている他の従業員が存在するが今回の従業員に対して業務軽減の措置が講じられていないこと等を理由に会社の行った解雇は無効であると判断しました。

② 能力不足、成績不良により業務を任せられない

従業員の能力不足等により業務をうまくこなせないという場合、会社として当該従業員に与える業務がなくなり、当該従業員を雇い続ける意味を見いだせないという状況に陥ることがあります。
このケースで従業員を有効に解雇しようとする場合、能力不足等の状況確認と並行して別業務への転換可能性について検討しておく必要があります。

まずは従業員の能力不足等を客観的に示せるかについて確認をしておく必要があります。
解雇が争われた場合には、当該従業員がどのようなミスを、どの程度の頻度で行ったことにより能力不足等と判断されるに至ったかを資料をもとに説明できなければなりません。
当該従業員のミスに他の従業員が関係している場合、ミスが会社の指示により生じている場合、他の従業員も同程度のミスをしている場合には当該従業員の能力不足等を客観的に示すことは難しくなり、その状態で当該従業員を解雇することは危険です。
従業員の能力不足等は認められるものの前提として会社側の教育体制等が十分でないという場合には当該従業員のみに能力不足等の責任を負わせるのは適切でないとの判断がなされる可能性がありますので、会社側の教育体制及び従業員がミスをした場合のフォロー体制が整っていたということも示す必要があります。

次に当該従業員の別業務への転換可能性について考慮したかを確認しておく必要があります。
従業員がある業務でミスを繰り返す場合、使用者として当該従業員に他の業務を行わせてみてその適性を判断する機会を持ったか否かが解雇の有効性判断の要素となる場合があります。
従業員の職種が限定されている、または、会社の規模からして他の業務を行わせる余裕がない等の場合でない限りは解雇の判断を下す前に他の業務への適性を確認しておく必要があり、それを行わないまま当該従業員を解雇することは危険です。

なお、従業員を能力不足等で解雇する場合には、当該従業員が新卒・未経験で入社した者であるのか、経験者として特定のポストで入社した者であるのかによって、解雇の有効性判断のハードルが異なります。
当該従業員が新卒・未経験で入社した者である場合、使用者側で十分な教育を行ったか、別業務での適性確認を行ったか等を厳しいチェックされることになります。
他方で、当該従業員が経験者として特定のポストで入社した者である場合、使用者側における教育の実施はあまり重視されず、採用時に期待された能力が存在するか否かが問題となります。

参考裁判例
新卒者に関する裁判例
東京地方裁判所平成28年3月28日判決
業務不良を理由に解雇された新卒入社従業員3名が当該解雇の有効性を争った事案
裁判所は、当該従業員が解雇当時にその職位に見合った業務を遂行できていないことを認めつつも、以前は職位に見合った業務を遂行しており会社から相応の評価を受けていたこと、その後も業務上の目標を達成するなど改善努力は続けていたこと、特定の業務については問題があるとは認められず行うべき業務がないという状況ではないこと、人事評価はあくまで相対評価でありその低評価は必ずしも解雇事由に該当するものではないこと、当該従業員に職種や勤務地の限定はないため、当該従業員の適性に合った職種への転換や業務内容に見合う職位への降格等を行う余地があったにもかかわらず会社がそれを行った形跡がないこと等を理由に会社の行った解雇は無効であると判断しました。

経験者に関する裁判例
東京地方裁判所平成28年8月30日判決
業務遂行能力の欠如を理由に解雇された中途入社従業員が当該解雇の有効性を争った事案
裁判所は、中途入社従業員がどのような能力を期待されて入社したかに関する、プロジェクトの即戦力となる技術者として採用したという会社側の主張について、求人票の記載や面接時の質問、中途入社従業員が入社後に受けた研修の内容を指摘した上で、中途入社従業員については採用直後にプロジェクトに対応できるまでの即戦力を求められて入社したものとは認められないと判断した上で、中途入社従業員の一般的な実務能力が欠如していることを示す資料が存在しないこと、プロジェクトの遅滞は中途入社従業員のみの責任ではないこと、プロジェクトの遂行は協力委託先の進捗にも左右されること等の理由から中途入社従業員の業務遂行能力の欠如は認められないとして会社の行った解雇は無効であると判断しました。

③ 欠勤、早退、遅刻で業務を任せられない

従業員が欠勤等を繰り返す場合、都度、別の従業員を手配しなければならず、当該従業員が出勤することを前提に業務を組み立てることができないどころか駆り出される他の従業員が担当している他の業務にも支障が出てしまうため、解雇せざるを得ないと考えることがあります。
このケースで従業員を有効に解雇しようとする場合、従業員の欠勤等に対する会社の対応状況について検討する必要があります。

まずは従業員が理由なく欠勤や遅刻をした場合に会社として都度注意を行い、度重なる場合には懲戒処分を行う等の適切な対応をしているかについて確認をする必要があります。
会社が従業員の欠勤等について指導を行っていない場合、会社としてそれを黙認していると判断される可能性があり、そのような状況で当該従業員を解雇することは危険です。
従業員に対する指導を行っていることを客観的に示すことができるよう、口頭注意のみで済ますのではなく都度書面を残すようにすべきです。

次に会社の都度の指導にもかかわらず、従業員がなおも無断欠勤等を継続しているかを確認する必要があります。
これにより従業員に改善の余地がないということを示すことになりますので、無断欠勤等の状況は記録残すようにしておきましょう。
指導後の欠勤記録がない状況で当該従業員を解雇することは危険です。

なお、従業員が無断欠勤等を繰り返す場合でも欠勤等が業務に与える影響が大きくない、欠勤等の頻度が高くない等の場合には解雇が無効と判断される可能性もありますので注意が必要です。

参考判例
最高裁判所昭和52年1月31日判決
寝坊による遅刻を理由に解雇された従業員が当該解雇の有効性を争った事案
裁判所は、遅刻は就業規則上の解雇事由に該当すると認めつつも、寝坊は当該従業員の故意ではなく過失によるものであること、寝坊を防止すべき社内の仕組みが機能していなかったこと、当該従業員は寝坊後、業務への影響を最小限にとどめようと努力をしたこと、寝坊により生じた業務上の影響はさほど大きくないこと、当該従業員のこれまでの勤務状況が悪くないこと、当該従業員の寝坊を防げなかった他の従業員が軽い懲戒処分で済まされていること、会社においては過去同様の理由で解雇された従業員がいないこと等を理由に会社の行った解雇は無効であると判断しました。

④ 経歴詐称が発覚した

採用の場面で従業員から聞いていた経歴が虚偽であった場合、会社として騙されており本来であれば採用に至らなかったとして解雇やむなしと考えるということがあります。
このケースで従業員を有効に解雇しようとする場合、経歴詐称の程度や採用に与える影響について確認をしておく必要があります。

まずは経歴詐称の程度を確認する必要があります。
詐称がされたのが学歴なのか職歴なのか事後的に判明した事実関係と従業員から提出された履歴書を比較して確認します。
内容にかかわらず一部でも真実と異なる経歴が記載されているとして当該従業員を解雇することは危険です。

次に詐称された経歴が採用を左右する程度に重要なものであるか確認する必要があります。
詐称された経歴が当該従業員の業務上の能力や業務に必要な資格取得の前提となっているような場合には重大な経歴が詐称されたとの判断につながりますが、詐称の有無に関わらず採用結果に変わりがなかったという経歴が詐称されていた場合には解雇に値しないという評価になる可能性が高くなります。

参考判例
名古屋地方裁判所昭和55年8月6日判決
大学中退等の事実を隠したという経歴詐称を理由に解雇された従業員が当該解雇の有効性を争った事案
裁判所は、当該従業員が大学に進学しているにもかかわらず最終学歴を高校卒業とし、大学在学中の期間について別の会社に勤めていたと虚偽の事実を記載した履歴書を提出したことは認めつつも、会社が学歴不問として従業員の募集を行っていたこと、募集職種は肉体労働であり学歴は重要な意味づけをもたないこと、大学中退を高校卒業とする詐称は詐称の程度が大きくないこと等を理由に会社の行った解雇は無効であると判断しました。

⑤ 職場における不正行為が発覚した

従業員が職場で横領等の不正行為をしていたことが判明し、そのような従業員は職場に置いておけないとして解雇を考えざるを得ないという場合が存在します。
このケースで従業員を有効に解雇しようとする場合、横領等の不正行為を客観的に示すことができるかを確認する必要があります。

職場で従業員が横領等の不正行為を行った場合、その金額の多寡等にもよりますが、その行為の重大性から、他の事由で従業員を解雇しようとする場合と比較して解雇の有効性が認められやすいという側面があります。
ただし、横領等の不正行為を客観的に示すことができない状況において当該従業員を解雇することは危険です。

横領等の不正行為に関しては当該従業員が事実関係を認めることも大事ですが、それとは別に、金品の物理的な所在や防犯カメラ映像等の客観的な証拠を揃えておくことが重要です。

参考判例
東京地方裁判所平成22年9月7日判決
会社の預金を着服したこと等を理由に解雇された従業員が当該解雇の有効性を争った事案
裁判所は、会社から横領を疑われた当該従業員が預金送金の使途について納得のいく説明をしていないということは認めつつも、会社から提出された証拠からは、そもそも当該従業員が預金を横領したということを認めることはできないとして会社の行った解はを無効であると判断しました。

まとめ

今回は従業員を解雇する際に注意すべき事項について解説をしてきました。
使用者が解雇という選択をする場合には従業員の雇用契約関係が労働法規により強く保護されているということを念頭に慎重に手続を進めるべきであり、拙速な解雇判断は会社に大きな損失をもたらす可能性があるということを認識しておく必要があります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二
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