1 修理、交換の請求
① 民法の定め
製品に契約不適合がある場合、買主は、修理、交換のどちらを選択することもできますが、売主は、(買主に不相当な負担をかけないときは)買主が請求した方法と異なる方法をとることができます。つまり、買主が交換と言ったときでも、売主は修理を選択することができます。
また、売主に過失がなくても、売主は修理、交換をしなければなりません。
② しかし、契約書で①と違う定めをすれば、契約書が優先します。
■ 「修理か交換かは、買主が定め、売主はその定めに従う。」
→ 買主が交換と言えば、修理で足りる場合でも、売主は交換しなければなりません。
■ 「修理か交換かは、売主が定める。」
→ 売主が修理と言えば、買主は交換を選択できなくなります。
■ 「契約不適合が売主の過失により生じたときは、売主は修理、交換をしなければならない。
→ 上記のとおり、売主に過失がなくても、売主は修理、交換をしなければなりませんが、このように定めると、売主に過失がないと、買主は修理、交換の請求ができなくなります。また、契約不適合の証明はできても、売主に過失があるかどうかは、売主が製造の過程で契約不適合を予想できたかどうかにかかってくるため、証明が難しいのが一般です。このような条文だと、買主は売主に対して、修理、交換を請求することが難しくなります。
2 損害賠償請求
民法では、売主が、自分の過失によって、契約不適合がある製品を売り、買主に損害が生じたときは、買主に損害賠償する義務があります。反対に言うと、過失がなければ損害賠償義務は負いません。
しかし契約書に、売主に過失がない場合でも、売主は買主に対して損害賠償義務を負うとなっていれば、過失がなくても、損害賠償義務を負うことになります。
以上のように、民法と違う定めを契約書ですることによって、一方に有利な契約書を作ることが可能ですので、注意が必要です。