紛争の内容
ご依頼者様は建築関係の企業であり、様々な工事などを外注(請負)していました。
5~6年ほど前に外注をしていた工事会社から、請負代金が未払いであるとして請負代金請求訴訟を起こされたため、弊所にご相談され、ご依頼となりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
多くの場合は、訴訟提起の前に「未払いがあります。払ってください」という連絡が何らかの方法であるものですが、本件は、事前の連絡・交渉が全くないまま訴訟が提起されたという事案でした。
そのため、突然裁判所から訴状が届いたご依頼者様(代表者様)は大変驚いたとのことでした。
なぜこのような流れになったのかというと、おそらく、消滅時効の問題があったからだと思われます。
工事の請負代金についての消滅時効は3年(旧民法170条2号。現民法については166条を参照。)であったため、仮に5~6年前の請負代金が未払いであったとすると、請負代金債権は時効により消滅したと主張することができます。本件はさらに、ご依頼者様が2年数ヶ月前に未払いがあることを認めて後日支払うと回答したという債務の「承認」(旧民法147条)があった旨、相手方は主張しており、相手方はこの債務の承認から3年が経たないうちに時効の完成を妨げる必要があったため、急いで訴訟を提起したのだと思われます(「催告」(民法150条1項)をする方法もあったとは思いますが、例え催告をしても、時効完成までの猶予は6か月間しか延びません。)。
本件の主な争点は、2年数ヶ月前に債務の「承認」があったかどうかの点に絞られ、この点についてお互いに主張立証がなされました。
本事例の結末
最終的に、本件では、相手方請求額の15%程度の解決金を支払うことで和解に至りました。訴訟終了までのスピードや解決金の金額を考えれば、勝訴的和解であったと思われます。
本事例に学ぶこと
代金の請求をする側・される側に関わらず、消滅時効には十分注意が必要です。特に時効に関する民法の条文は最近改正があったばかりですから、新旧のいずれの条文が適用されるのかについては慎重に検討する必要があります。
未払いの債権または未払いの債務がある場合には、ぜひ一度弁護士まで、どのような対応が適切なのかをご相談頂くことをおすすめ致します(弊所では、このような契約関係のトラブルに関する顧問会社様からのご質問に随時回答しております)。