境界紛争が発生した場合の各種解決方法と、そのメリットデメリットについて述べ、具体的にどの手続きを使ったらよいのかについても触れてみました。

1 はじめに

 隣人との間で境界についての紛争が発生したというような場合、どのように解決したらよいのでしょうか。紛争解決の方法とメリット、デメリット、また、具体的にどのように進めたらよいのかについて述べてみます。

2 境界とは

 土地の境界には、筆界(ひっかい)と所有権界があります。筆界とは、ある一筆の土地が登記されたときに、その土地に隣接する他の土地との境を構成するとされたもので、いわば公的な境界です。これに対して所有権界とは、土地の所有権の範囲を示すものを言います。

 通常、筆界と所有権界は一致します。しかし、下記のようにBさんがAさんの土地の一部を長期間占有し、Aさんの土地の一部を時効取得したという場合には、下の図のように、筆界と所有権界は異なることになります。     


3 境界確定のための制度

① 調停

 境界(筆界と所有権界を含む)に関する争いを、簡易裁判所での調停手続によって解決しようとするものです。

 訴訟によって解決するよりも、時間も費用も節約できますが、話し合いが成立しなければそれまでですし、調停手続きを主宰する調停委員も境界に詳しい人ばかりとは限りません。

 後述するように、境界問題相談センターや筆界特定手続ができた現在では、境界紛争に関して、調停手続を利用する意味はあまりないように思います。

 ただ、費用が安いので、話し合いが成立するかどうか、とりあえずやってみようという場合には、利用する意味があるかもしれません。

② 境界問題相談センター

 各都道府県の土地家屋調査士会と弁護士会の協力によって運営されている機関です。

 土地家屋調査士と弁護士が2人1組で調停委員になり、紛争当事者の話し合いにより、筆界および所有権界についての紛争を解決していくものです。

 話し合いがまとまれば、合意調書が作成され、この合意調書に基づき、当事者は、登記手続や境界標の設置をすることになります。

 費用については、埼玉県の場合を例に挙げれば、相談費用1万円、調停申立費用2万円、調停期日ごとに2万円(申立人と相手方が1万円ずつ)、成立した場合は内容に応じて5万円以上となり、他に資料調査費用として3万円がかかります。また、測量をする場合には別途、数十万円の測量広がかかります。

 このようにお金はかかりますが、それでも訴訟の場合に比べて費用が安いですし、時間も短くてすみます。

 また、この手続では、筆界と所有権界の両方を扱います。

 デメリットは、境界問題相談センターは、当事者の話し合いによって手続を進めていくものなので、相手方が話し合いに応じなかったり、話し合いが成立しない場合は、紛争を解決することができないという点です。

 ただ、それでも土地家屋調査士、弁護士という境界問題の専門家が主宰しますから、話し合いが成立する可能性も、それなりに高いと思います。

③ 筆界特定制度

 法務局の筆界特定登記官や外部専門家である筆界調査委員(土地家屋調査士、司法書士など)により、測量、利害関係人への意見聴取などの調査を経て、最終的に筆界特定登記官が「筆界特定書」によって筆界を特定する手続です。

 費用は、申請手数料が(対象の土地の価値によりますが)数千円から数万円、また、ほとんどの場合、測量をするので、測量費として数十万円の費用がかかります。

 筆界調査委員が積極的に資料を集めて調査してくれます。調停とはそこが違いますし、また、境界問題相談センターよりも費用は安いと思います。。

 ただ、筆界特定制度は、筆界を決めるだけで所有権界には関知しませんから、時効取得によって、筆界と所有権界が異なっている場合には、この制度は適しているとは言えません。また、当事者同士の話し合いによって紛争を解決するということは、この制度では予定されていません。

④ 訴訟

 時効取得が問題になり、筆界を決めてもそれだけでは意味がないという場合は、所有権界(所有権の範囲)を決める民事訴訟を起こすことも考えられます。

 上記の例のように、BさんがAさんの土地の一部を時効取得しているという場合は、BさんはAさんに対して、時効取得部分について、Bさんの所有に属するということの確認と、AさんからBさんへの移転登記を求める訴訟を起こすことになります。

 ただ、訴訟を起こすときは、ほとんどの場合弁護士に依頼することになりますから弁護士費用がかかりますし、また、時間もかかります。

4 どの手続を使うのか

 それでは、境界に関する紛争を解決するについて、どのような手続きを使ったらよいでしょうか。

 筆界の争いがある一方で、(長年占有しているため)時効取得が問題になり所有権界も争いの対象になっているという場合は、まず、調停または境界問題相談センターで話し合いを行い、そこで決着がつかない場合に、訴訟をするということがよいように思います。

 時効取得が問題にならず、筆界だけが問題になっているという場合は、筆界特定制度を使うのがよいと思います。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫

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