中古住宅を購入する際、日当たりなどの状態はすぐに見て分かるものですが、傾斜、つまり傾いている建物であるということは一見して分かりにくいものです。中古の建物の場合、建物自体には一定程度の経年劣化等があることが当然の前提になっています。これに対し、経年劣化ではなく、「傾斜している」ということが後から分かったという場合、そのような物件を売った売主に責任追及できないのでしょうか。今回は中古物件に傾斜がある場合について責任追及の可否などについて説明します。
中古物件、買った後に傾斜(傾き)があることが分かったら?
購入した建物に「傾斜」という欠陥があったら
不動産の購入は、通常代金も高額になりがちですので、買った後にトラブルがあると分かった場合は、その建物を売った側に責任追及したいと思うものでしょう。建物が傾斜している場合も、建物の欠陥、つまりその建物を買った契約の内容に適合しない「契約不適合・瑕疵」という状態に当たるというのが一般的です。
どのくらいの傾斜で、「契約不適合・瑕疵」といえる?
建物に傾斜があることは、契約不適合・瑕疵になり得るというのは上述のとおりですが、「全く傾斜がない」という状態を求められているわけではなく、それが建物として問題が生じる程度であることが前提となります。
新築の建物の場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」や国土交通省が示している技術的基準により、3/1000未満の勾配までを許容しています。
傾斜角による影響
一般的には、
・5/1000の傾斜角で壁と柱の間に隙間ができる
・10/1000の傾斜角で柱の傾き・建具の開閉に支障が生じる
・15/1000の傾斜角で倒壊の危険・使用困難がある
とされているようです。
中古建物の場合
契約不適合責任(瑕疵担保責任)を問えるか
上記のような基準を示した裁判例では、
「本件建物が本件売買契約当時、築16年が経過した木造建物であることを考慮しても、通常有すべき品質を備えていなかったもの(契約不適合・瑕疵)と評価でき」るとしています(東京地方裁判所平成19年4月6日判決)。
建物の傾斜は、日焼けや壁の劣化などとは異なり、「築後の経年変化により通常生じるもの」とまでは言えません。買主が傾斜の存在を承知した上で「買受をする」と意思表示したり、その中古住宅の代金について傾斜の存在を前提に決定しているなどの事情がないのであれば、買主はその傾斜を許容しなければならない義務はありません。
契約に「免責条項」があった場合はどうか?
たとえば、中古住宅の契約書に、「売主は,買主にこの物件を現況有姿のまま引渡すものとし,この物件について引渡し後6か月以内に発見された雨漏り,白蟻の害,建物構造上主要な部位の木部の腐食,給排水設備の故障の瑕疵についてのみ,買主に対して責任を負うもの」とする瑕疵(契約不適合)の責任を免除する特約があった場合はどうでしょうか。
このような免責条項があった場合、契約不適合責任(瑕疵担保責任)の免除を原則としつつ、列挙された瑕疵(雨漏り・白蟻・主要部分の木部の腐食・給排水設備の故障)に限定して免責の対象外とする趣旨であって、「建物の傾斜」は列挙された瑕疵のいずれにも該当しないため、免責対象となってしまう(契約不適合責任を問えない)ことになります。
免責除外の対象になっていないかは、契約書の内容をよく確認すべきでしょう。
中古建物を購入するときの注意点
以上のとおり、中古建物の場合であっても、傾斜があることを「契約不適合(瑕疵)」とする余地があります。
しかし「契約不適合」となっても、契約の特約により売主への責任が免除され、責任追及ができない場合があります。
そこで、買主としては、まずは傾斜を含めた問題がないかを確認することはもちろんのこと、傾斜があることを後で知っても泣き寝入りになってしまうということを避けるために契約の内容をよく確認をするようにしましょう。
中古物件購入後、その建物に不備があることが発覚したら?
購入した中古物件に何らかの不備があると気付き、売主に確認しても対応をしてもらえない場合、その対応が法的に責任追及できる契約不適合等に当たらないのか、弁護士に相談してみることをお勧めします。もちろん、最終的には裁判等で争って判断してもらうほかないとしても、不備の内容についての見解やどのような資料があればよいかといったことなどを相談すれば、紛争解決の糸口になることもあるかもしれません。
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