不正競争防止法とは、企業間の不適切な競争を防ぎ公正な競争を維持することを図るための法律であります。営業秘密の漏洩や他社商品等の模倣などを規制しており、様々な規定が置かれています。
本ページは、不正競争防止法で規制されている行為・違反した場合の罰則などについて専門家が解説するページになっております。
不正競争防止法により規制されている行為について
同法第2条第1項各号において違反対象の行為を「不正競争」と定義しており、大きく10の行為に分類することができます。
以下では、その10個の「不正競争」の具体的内容について解説いたします。
1 周知表示混同惹起行為(1号)
「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」
簡単に説明しますと、広く認識されている他人の商品・営業の表示(商品等表示)と同一または類似の表示を使用し、混同を生じさせる行為を指します。
例を挙げますと、人気商品の類似品を作成し、消費者に対して真正品かどうかの判断を誤らせた行為をした場合、「周知表示混同惹起行為」に該当してしまいます。
2 著名表示冒用行為(2号)
「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為」
これは、他人の商品や営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自分の商品・営業の表示として使用する行為を指します。
同行為は、「周知表示混同惹起行為」と似ていますが、「混同を生じさせるおそれ」という要件が不要であることが特徴であります。
もっとも、「著名な」という要件があることから、単に広く認識されているだけでは足りず、全国的に知られている程度まで求められます。
顧客吸引力の不当利用やブランドイメージの低下といった被害を防ぐ目的で同行為が規制されました。
3 形態模倣商品の提供行為(3号)
「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為」
この行為は、他人の商品の形態を模倣した商品(いわゆるデッドコピー)を譲渡などする行為を指します。
「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる、商品の外部及び内部の形状並びに形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいいます。
また、ありふれた形態のものに関しては保護が受けられない可能性があります。
4 営業秘密の侵害(4号~10号)
窃取、詐欺、強迫その他不正な手段によって「営業秘密」を取得し、自ら使用する、もしくは第三者に開示する行為を指します。
同法の「営業秘密」に該当するためには、以下の3要件を満たす必要があります。
(1) 秘密管理性
当該情報に接する人が秘密として管理されていることを客観的に認識することができ、その情報に接することができる人物が限定されていることをいいます。
例を挙げますと、「社外秘」・「マル秘」との表示のあるデータ等、就業規則や秘密保持契約により秘密保持義務が課されている情報等、情報を閲覧する際にパスワードを要する情報などを指します。
(2) 有用性
営業活動をする上で有用な情報であることをいいます。
例えば、顧客情報、製品の設計図・製造方法、プログラム、仕入れ先情報などの場合、有用性を満たす情報にあたります。
(3) 非公知性
一般的に知られていない情報のことをいいます。
既にネットや本に掲載されている情報は、誰でも閲覧ことができるため「非公知性」を有しないものといえます。
5 限定提供データの不正取得等(11~16号)
窃取、詐欺、強迫その他の不正な手段によって限定提供データを取得し、自ら使用する、もしくは第三者に開示する行為を指します。
「限定提供データ」とは、企業間で複数の者に提供・共有されることで、その活用が期待されているデータをいいます。
6 技術的制限手段無効化装置等の提供行為(17~18号)
技術的制限手段により制限されているコンテンツの視聴やプログラムの実行などを可能とする(技術的制限手段の効果を無効化する)装置、プログラム、指令符号(シリアルコードなど)、役務を提供するなどの行為を指します。
「技術的制限手段」とは、音楽、映像、ゲーム等のデジタルコンテンツについて、無断複製や無断視聴などを防止するための技術的手段をいいます。
例を挙げますと、ゲーム機に対し海賊版のゲームができるように改造した行為が該当します。
7 ドメイン名の不正取得等の行為(19号)
図利加害目的で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、または使用する行為を指します。
不正競争防止法上、類似するドメイン名を使用した場合、誤ったアドレスを入力したユーザーを誤認させたままアクセスを獲得することができ、他人と類似するドメイン名を取得することで、事業を邪魔することができてしまうことから規制しております。
8 誤認惹起行為(20号)
商品・役務またはその広告等に、原産地、品質・質、内容等について誤認させる表示をする行為、またはその表示をした商品を譲渡するなどの行為を指します。
9 信用毀損行為(21号)
競争関係にある他人の営業上の信用を害するような虚偽の事実を告知または流布する行為を指します。
10 代理人等の商標冒用行為(22号)
パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なくその商標を使用などする行為を指します。
不正競争法防止違反による罰則は?
民事上の措置
民事上の措置として、同法は「差止請求」・「損害賠償請求」・「信用回復措置請求」を規定しております。
差止請求について、具体的には、「侵害行為の停止請求」、「侵害行為をはたらくおそれがある者に対する予防請求」、「侵害行為を組成する物の廃棄など侵害の停止や予防に必要な措置の請求」をすることが可能であります。
また、仮に侵害者に故意や過失がなかったとしても、請求できる可能性があります。
刑事上の措置
「不正競争」のうち、以下の行為に関して刑事罰が規定されています。
・営業秘密に対する不正競争行為
・周知表示混同惹起行為
・著名表示冒用行為
・形態模倣商品の提供行為
・技術的制限手段無効化装置等の提供行為
・混同惹起行為
・誤認惹起行為
特に、営業秘密に対する侵害行為に関しては他の行為と比べ重い罰則が設けられています。
また、法人に対しては、多くの行為類型で3億円以下の罰金刑が規定されており、営業秘密を侵害する行為の一部については5億円以下の罰金(海外使用等に関しては10億円以下)が科される可能性があります。
まとめ
以上、不正競争防止法により規制されている違反行為及び違反した場合の民事上・刑事上の措置についてご説明いたしました。
自社行為が不正競争防止法違反に該当すると主張されてしまった場合、会社のイメージが下がりその後の業績にも影響してしまう可能性がございます。
したがって、不正競争防止法に違反しないためにも、まず、「どのような行為が不正競争にあたるのか」を把握しておくことが重要であります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。