紛争の内容
会社から身に覚えのないミスを指摘され謝罪や反省を求められ、強引な退職勧奨を受けた挙句、解雇されてしまったという元従業員の方からのご相談でした。
そもそもミスを起こしたことはなく、会社が解雇理由として挙げていることは事実無根であり、解雇には納得できないことから、不当解雇として争うことになった事案です。
交渉・調停・訴訟などの経過
依頼者は、当事務所にご相談いただく以前に、社会福祉労務士に依頼し、個別労働紛争のあっせんの申立をしていましたが、会社側が出頭しなかったことから、問題解決には至りませんでした。
そこで、当事務所では、会社から解雇されるまでの事情を聞き取り、労働審判の申立を行うことにしました。
申立にあたっては、会社が行った解雇は違法無効であることを前提に、元従業員の方(原告)を職場復帰させること、解雇期間中の賃金を支払うこと、違法解雇により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料を支払うことを求めました。
これに対し会社側は、労働審判の期日において、原告が重大なミスを犯したことや、就業態度に問題があったこと等を指摘した上で、原告には業務適性がないと判断せざるを得なかったために解雇という形になったと主張してきました。
解雇が違法であるかどうかは、従業員が、就業規則等に記載されている解雇事由に該当するような行動をとったか、解雇事由に該当する行動があったとして解雇という方法をとることが一般的な観点からみて相当かという基準で決せられますので、原告はミスなど起こしていないこと、会社として、原告を辞めさせるまでの対応が妥当なものではなかったことを主張しました。
本事例の結末
労働審判は、原則的に3回の期日で結論に達するという手続になります。
今回の労働審判では、1回目・2回目の裁判所の期日で、双方が主張を尽くし、審判委員会の心証(双方の主張をもとに労働審判委員会が考えた暫定的な結論のようなもの)が開示され、3回目の期日で和解内容が確定するというような流れになりました。
最終的には、こちら側の言い分が認められ、会社は、解雇を撤回する、元従業員の方に解決金として100万円を支払うという内容の和解がまとまりました。
本事例に学ぶこと
会社を経営する方の中には労働契約法の趣旨を十分に把握していないと思われる方がいまだ多く存在します。
その影で、不当解雇の憂き目に遭い、泣き寝入りをしている労働者の方もまた多く存在するように思います。
労働契約法の下では、労働者は手厚く保護されていますので、理不尽な理由で解雇されてしまった場合、適正な手続を経ることにより救済される(多くは金銭的な解決ということになってしまいますが)可能性は大いに考えられます。
以上を踏まえて、理不尽な解雇に対しては争う余地があるということを念頭に置いていただければ幸いです。