先日の台風19号は日本全国に大きな被害をもたらしました。事前に、関東を直撃することが分かっていたので、当日は、会社を休業としたところもあったと思います。このように会社の判断で休業とした場合、従業員に給料を払わなければならないのでしょうか。
労働基準法26条によると、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、使用者は、平均賃金の60%以上の手当てを支払わなければならない」となっています。反対にいうと、使用者の責に帰すことができない事由によって休業をした場合は、使用者は給料を支払う必要はありません。それでは、今回のような強い台風の場合はどう考えるべきでしょうか。
厚生労働省の通達(昭41.6.21 基発第639号)によると、「雨天などによる休業の場合においても、それが自然現象によるものであるという理由のみで、一律に不可抗力による休業とみなすべきものではなく、客観的にみて、通常、使用者として行うべき最善の努力を尽くしても、なお、就業させることが不可能であったか否かなどにつき、事業の諸事情を総合勘案のうえ、「使用者の責に帰すべき事由による休業」であるか否かを判断すべきものである」とされています。
つまり、給料を払わなければならないかどうかは、「客観的にみて通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしても、なお、就業させることが不可能であったか否か」ということにかかっています。
今回の場合、台風直撃の当日は、多くの鉄道が休業することになっていましたし、また、天気予報は大風、大雨を予想していたのですから、「客観的にみて通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしても、なお、就業させることが不可能である」と判断してよい場合にあたると思われ、会社の判断で休業とした場合でも、従業員に給料を支払わなくてよい場合にあたると考えられます。
もちろん、会社から「明日は休みにします」と言っていないのにかかわらず、従業員が自分の判断で休んだということであれば、給料を支払わなくてもよいことになりますが、今回のような強い台風の場合は、会社の判断で休業とせざるを得ない場合も多いと考えられます。