質問
生活保護受給者の賃貸借契約の更新について、市役所の方針としては、
■生活保護者受給者が更新料を支払い、契約書の更新を済ませる。

■領収書及び契約書を市役所に提出

■およそ2週間後に更新料を支給
という形になっていますが、生活保護受給者が更新料を受け取るまでにおよそ2週間の期間を要するために、かなりの生活苦になると主張され、生活保護受給者の方に対応してもらえないことが多々あります。

また、更新手続きにおいてですが、通常、3つ更新が必要になります。

①建物賃貸借契約の更新
②保証会社の更新(保証会社は保証人の代わりです)
③火災保険の更新

更新手続きが遅れる、または、更新手続きをしない場合になりますと
①の建物賃貸借契約は、更新したものとみなされ、契約は存続された状態になるかと思われますが、
②の保証会社と③の火災保険が打ち切られてしまい、賃料と火災についてかなりのリスクをオーナーに負わせることになってしまいます。

そこで、生活保護受給者に更新契約書の手続きを行っていただき、更新料(建物賃貸借の更新料、保証会社の更新料、火災保険の更新料)を受け取らないまま、それらの領収書を発行する。生活保護受給者とは、市役所から支給を受け次第、ただちに弊社に支払いするよう口頭で約束をしてもらう。

保証会社の更新料と火災保険の更新料は、保証会社及び火災保険会社に弊社が立替払いをし、手続きを完了させる

およそ2週間後、市役所から更新料が支給され、生活保護受給者が弊社に支払いをする、
という状態にしようと思っています。

ただ、弊社として危惧しているのは、
ア 実質空の領収書を発行したことになってしまうので法的に問題があるのではないか、
イ 生活保護受給者が更新料を市役所から支給されても、未払い金を弊社に支払わないため弊社から支払を請求しても、領収書を根拠に支払済みを主張されれば、弊社としては回収が困難になってしまうのではないか、
という2点です。

それとも、諸々の更新料につきましては、弊社と生活保護受給者で借用書を交わし、領収書を発行した方がいいでしょうか。
一旦、弊社が諸々の更新料を生活保護受給者に貸し付け、それを領収した状態にした方がいいのでしょうか。

回答
ご相談のような、生活保護受給者を賃借人とする場合の賃料ないし更新料の徴収方法については、皆さん、同じような悩みを抱えておられます。
現在は、市役所から賃貸人側への直接支払いや、市役所から生活保護受給者への事前支払いには応じないのが行政の運用です。

ただ、現在の御社の対処方法のように、更新料等を受け取っていないにもかかわらず、いったんそれらの領収証を発行することは、法的リスク(万一、生活保護受給者が御社に更新料等を支払わない場合にも、事前に発行した領収証を根拠に「既に支払い済みである」との抗弁が成り立ってしまう)の高い行為ですので、避けていただきたいです。
かといって、御社と生活保護受給者の間で、借用書ないし立替払いの返還合意書のようなものを取り交わしておくやり方(御社からの貸し付け、または立替払いとして処理する方法)も、うまくありません。生活保護費は、原則として借金の返済に使用してはいけないというルールがあるからです。

結局、生活保護受給者の方の生活が困窮してしまうという事情があるにせよ、基本どおりに、まずは生活保護受給者から御社に対して更新料等をお支払いいただき、御社から領収証の発行を受けた生活保護受給者が市役所で手続きをして、更新料等として出費した分の支払いを受ける、という流れで進めるほかありません。
2週間の間にどうしても生活が困窮してしまうという方には、社会福祉協議会で実施している緊急小口資金の制度などを利用していただき、その後、保護費から返還する、という方法もあるようです(公的機関での、緊急やむを得ない生活資金の借入れなので、形式的には借金の返済に該当しても問題になることが少ないです)。