質問
採用面接において、過去、癲癇で気を失って倒れたと本人から申出がありました。現在薬を服用中ですが、過去2年はその症状は出ていないとのことです。
人手不足なので採用したいところですが、万一癲癇で事故(自動車事故など)が起こった場合、会社の責任はどうなるのか心配です。
もし、この応募者を採用するとしら、危機管理としてどのような対策・対応をとった
らよろしいでしょうか。

回答
本人が癲癇で事故を起こした場合、
① 会社の、本人に対する責任
 ∵ 会社には、従業員に対する安全配慮義務があるからです。
② 会社の、第三者に対する責任
 ∵ 会社には、従業員が興した事故でも、使用者責任(民法715条)があるからです。
の2つが問題になります。

まず、①ですが、癲癇で自動車事故が起きた場合は、会社が安全配慮義務を尽くさず、本人を不適当な業務に就かせたと主張されて、本人(あるいは本人が亡くなった場合はその親族)から損害賠償請求がされる可能性があります。

この点、会社で予定している業務内容を詳細に記載した書面を準備し、その業務への支障の有無の判断を専門家である医師に求めるのという方法が一般に言われています(本人の主治医でよいと思います)。そして、医師が問題ないと判断すれば、問題ないと判断された業務に従事させます。

医師が問題ないとした業務で、万一事故が起きても、この場合は、会社は安全配慮義務を尽くしているから責任はないとされることが多いと思います(但し、100%ではありません)。
ただ、実際問題として医師がこのような診断書を書いてくれるのかという問題はあります。

また、②ですが、こちらは第三者に対する責任ですから、医師の診断書の有無にかかわらず責任を負う可能性が大です。
本人をその業務に就かせたこと、また業務の執行するについて監督を怠らなかったこと、について過失がないということが証明できれば、責任を免れることができますが、裁判では、この点はまず認められません。

そうすると、第三者に対する損害賠償義務に対処するには、何らかの保険をかけておくしかないということになるかもしれません。本人に対する責任でも、第三者に対する責任でも、何らか適切な保険があれば、その保険に加入しておくのが一番よいということになります。