質問
会社の一部門について、採算が取れないことから、その部門の部長Aが退社して独立し、この部門を、個人事業(A商店)として引き受けることになりました。
① この部門の社員がA商店へ移った際、有給休暇は、半年後からあらためて付与されることになるのでしょうか。
② この部門の社員のうちBは、A商店には雇い入れませんが、何か注意することはありますでしょうか。
③ その他、何か注意すべきことはありますでしょうか。

回答
①について
年次有給休暇の発生要件とされている「6か月間の継続勤務」(労基法39条1項)とは、労働契約の存続期間すなわち事業場における在籍期間を意味するものとされています。
従って、会社を退職し、A商店へ移籍する方々の有給休暇は、A商店へ移籍して半年後から改めて付与されることになります。

②について
Bについて、雇用契約を結ばないA商店との関係では問題がないのですが、会社との関係では、部門閉鎖を機にBを解雇するという側面がありますので、注意が必要です。
本件でも、Bをいきなり会社都合解雇として扱うと、(その時はBから異議が出されていなくとも)後日、解雇無効を争われる可能性があります。採算が取れない部門を切り離す経営判断は仕方がないとしても、残りの部門で引き続きBを雇用できないかについても検討し、Bに打診するなどして、会社としてできるかぎり手を尽くしたといえる形を残しておくことが重要です。

③について
A商店に移ってもらう従業員一人一人に対する丁寧な説明を心掛けていただければと思います(このようにならざるを得なかった背景事情を含め、今後の雇用形態の変更点、条件等をできるだけ詳しく説明)。
A商店へ移る従業員に関しては、どうしても、「F商事を整理解雇された」という見方ができてしまうため、整理解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、説明義務)を念頭に置く必要があります。A商店に引き続き勤務してもらうことで、十分な手当をしているとの評価になるとは思うのですが、その後の雇用条件がA商事に勤務していた時となるべく同等になるよう努力するなど配慮が必要かと思います。