質問
① 事故時以外の乗務時間すべての画像を、ドライブレコーダーで抜き打ち確認することはプライバシーの侵害に該当するでしょうか。
② 画像に映った運転手の行動をもとに、給料返還請求を受けた場合、目的外利用などをもとに証拠能力を否定できるでしょうか。
回答
①について
休憩時間は、雇用契約における指揮命令から完全に解放され、労働者の自由に利用されるべき時間(労基法34条3項)とされています。したがって、休憩時間について撮影することは、プライバシーの侵害に該当する可能性が高いと考えられます。
(参照判例:岡山地裁平成3年12月17日)
「本件従業員控室は、被告が管理する施設であり、原告らの他にも自由に従業員らが出入りしていたものであるが、原告らは私的な会話等をすることもあったというのであるから、原告らがこのような会話を他人に聞かれていることを容認していたものとは考えられず、本件従業員控室に盗聴器を設置し会話を傍受することは、原告らのプライバシーを侵害するものであって違法なものといわなければならない。」
②について
「給料返還請求を受ける」というのは、「会社が残業代等請求を受ける」という内容と理解して回答します。
民事事件における証拠は、違法の程度が著しい場合や反社会的手段で得られた場合などに限り証拠能力が否定されており、同意のあるカメラの映像の、目的外利用を理由に証拠能力が否定される可能性というのは低いと思われます。
そして、会社が残業代等請求を受けた場合に調査の必要性があることを理由として、同意のあるカメラ映像を見ることは、必要な範囲と方法に限れば、社会的に許容されるものとして違法と評価される可能性は低いと考えられます(参照判例:東京地裁平成14年2月26日)。