質問
当社の納入した機械に不具合があるということで、当社従業員が修理を行ったのですが、その修理にミスがあり、機械が発火するなどの事故がありました。
① この機械は、平成7年の製造物責任法の施行前の引き渡しのため、同法には該当しないということでよいでしょうか。
② 相手の会社は、この機械を使用していた作業員が業務できなかったことについても補償を求めると主張しています。このような損害も賠償しなければならないのでしょうか。

回答
1 ①について
製造物責任法は、公布の日である平成6年7月1日から起算して1年を経過した平成7年7月1日から施行されました。そして同法は、製造物責任法の施行後に、その製造業者などが引き渡した製造物についてのみ適用があります。したがって、製造物責任法の対象にはならないと考えられます。

2 ②について
上記のとおり、製造物責任法の適用はありませんが、修理をした方の対応には、「過失」があったと考えられるので、保守契約上の債務不履行責任、あるいは不法行為責任という民法上の責任が発生すると考えられます。

この場合の損害賠償の範囲ですが、判例は、相当因果関係が認められる範囲につき賠償責任が認められるという考え方に立っています。これは、個々の事案ごとに、被害者の被った損害が通常損害であるか、特別損害であるかを検討し、通常損害に該当する場合には当然に賠償の範囲となり、特別損害に該当する場合には、不法行為時にその損害発生について当事者が予見可能であったかどうかを判断し、予見可能性があったときには賠償責任を認めるというものです。通常損害は、簡単にいえば「Aという事象が起こった場合には、通常それが原因でBという結果が起こる。それが当然に予想できる」というものです。

本件においても、その判断は個別具体的な事情によりますので、明確に回答することは困難ですが、例えば御社の機械が、前後工程の機械稼働に必須のものであり、御社の機械の不具合により、前後の機械が稼働せず製品の出荷ができなくなったという損害には、通常損害として賠償責任を負う可能性があります。なお、作業員が遊んでしまったことによる損害は、出荷できなかったことによる損害のなかに包含されると思われるので、別途請求することは難しいと思います。
また、これら損害賠償を請求する場合には、損害賠償を請求する被害者側において、損害の発生や欠陥の存在、損害と欠陥の因果関係を立証する責任を負います 。