質問
予定されております価格交渉には、親会社である米国のメンバーも参加予定です。
仮に米国メンバーによる押しの強い交渉に対し、下請法対象企業が「一方的な価格の強制」と訴えてきた場合、取り扱いはどうなるのでしょうか。
回答
下請法上の問題としては、買いたたきの禁止(下請法4条1項5号)に当たらないかが問題となります。
禁止される買いたたきとは、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」をいいます。要するに、不当な買いたたきとは、親事業者が優越的地位を利用して、通常では考えられない低価格で購入する場合をいいます。
具体的には、不当な買いたたきに当たるかどうかは、①対価の決定方法の不当性(下請代金の額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたか)、②決定内容の不当性(差別的ではないかなど)、③通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況および当該給付に必要な原材料等の価格動向等、行為の外形からみて、不当性が判断されることになります。
そこで、①~③に配慮しながら、下請代金に関する合意を形成する必要があります。
まず、親会社である米国メンバーは直接的には貴社の従業員ではないので、下請法上の「親会社」には該当しないと言えるでしょうか。
結論としては、このような理由から、不当な買いたたきであることを免れることはできないと考えます。
例えば、対価の決定方法が不当に行われていないか(①)を検討する場合には、親事業者と下請事業者が十分な協議を行ったかどうかが問題ですので、本国メンバーが押しの強い交渉をした結果、十分な協議が行われていないと判断された場合には、不当な買いたたきに当たることになるからです。
次に、押しの強い交渉がどこまでが「価格の強制」に該当するのかということですが、想定される違反事例として、親事業者が予算単価のみを基準とした単価引下げなどが挙げられます。
大切なのは、下請事業者と十分協議を行い、下請事業者に納得してもらうことですので、当事者双方が対等に意見を出し合い、その上で妥協点を見つけるという作業が必要になると思われます。