不正競争として、よく問題になるのが、退職した元従業員が自社の製造上の企業秘密を他社に漏らしている、あるいは退職した元従業員が自社の顧客を回って営業活動をしているという場合です。

このような場合、製造上の秘密、あるいは顧客名簿が秘密として管理されていることが必要です。そして、「秘密として管理されている」と言えるためには、「秘」「極秘」などの記載が情報媒体にされ、その他の情報と客観的に区別されていること、また、その情報へのアクセスが制限されていることが必要です。

退職した従業員が、自社の顧客先を回って営業活動をしても、上記のように「秘密として管理されている」と言えなければ、原則として損害賠償請求などをすることはできません。

退職後の顧客回りが違法になるのは、その従業員が自社内で重要な地位にあった、自社にいた時から退職後の営業について計画を練っていた、顧客カードを持ち出していたなどという事情がある場合です。

そこで、このような事情がない場合でも、従業員が顧客先を回ることを阻止したいという場合は、従業員から、「退職後した後に自社の顧客先を回らない、自社と競合関係にある他社に就職しない」などの内容が記載された誓約書をもらっておくことが必要になります。

このような誓約書があれば、その誓約書違反を理由にして、顧客先を回ることの禁止を求めたり、損害賠償請求をすることができます。